第30話「エネルギー政策は選挙で問われたか」

2019年07月25日

エネルギー政策は選挙で問われたか

 

参議院選挙が終わった。消費税や年金問題、雇用と賃金、そして明らかに失敗したアベノミクスと先行き不透明な日本経済の行方など、私たちの暮らしと生活に直結する問題に直面している中での参議院選挙だった。それにもかかわらず、投票率が50%を割り込むという歴史的に低い投票率だった。これは政権に迎合し怯え忖度した既存メディアが「盛り下げた」ことが大きいと思われる。

ただでさえ関心の低かった参議院選挙で、原発・エネルギー政策は経済問題の影に隠れて、ますます関心が低かったのだが、一つだけ印象的なシーンがあった。日本記者クラブが主催した7党党首による討論会(7月3日)で、「原発の新増設を認めない」という質問に対して、唯一、安倍晋三自民党総裁のみが手を挙げなかったシーンだ。山口那津男公明党代表が一瞬躊躇して回りを見渡しながら遅れて手を挙げた滑稽さはご愛敬だが、安倍総裁は「政策的な議論をしなければならない。政治はイエスかノーかではない。今の段階で答えられなくても直ちにノーではない。印象操作をするのはやめてほしい」と苦言を呈した。

字面はもっともらしい弁解だが、しかし絶望的な気分になった。もしも大転換する世界の現実や動向を知っているなら、脱原発・エネルギー政策はもはやイデオロギーで左右されることなく、産業政策・経済政策として取り組むべき政策課題だと理解できるはずだ。しかし、首相として自ら今なお原発輸出に拘り、ゆくゆくは原発新増設もと目論んでいる現政権のトップである。おそらく、「理解しているが手を挙げられなかった」のではなく、「世界の現実を理解していない」だけなのだ。最初から期待する方が無理だった。

これが今回の参議院選挙で、唯一、原発・エネルギーが争点になった一瞬だった。「脱原発かどうか」ではなく、「世界のエネルギー大転換にベクトルと足並みを揃えるかどうか」。そして国民の審判は「ノー」と出た。残念ながら、これからの数年間、日本はまた遅れてゆくことになる。