第27話 「プロシューマージャー」がもたらす「新しい現実と未来」

2019年04月23日

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電力消費者を「コンシューマー」(Consumer)というのは、英語の辞書を見れば分かる。次に、太陽光発電を屋根に乗せている「電力生産&消費者」は「プロシューマー」(Prosumer)と呼ばれる。生産(Produce)する消費者(Consumer)の英語を繋いだ造語で、知っている方とそうでない方に別れるかも知れない。そして、最近、さらに新しい造語「プロシューマージャー」(Prosumager)が出てきた。おそらくほぼ全ての方にとって初耳だと思うが、これは電力を生産し(Produce)、消費し(Consumer)、貯蔵する人(Storager)という意味だ。

 

このプロシューマージャーは、今年2月に出版された本のタイトルでありテーマでもある[1]。本書の編著者であるフェイレイドン・シオシャンシ博士は米国カリフォルニア州在住の電力と再生可能エネルギーの専門家。本書は、今後の電力の未来を考える上で必読書であり、簡単に内容を今回と次回の2回に渡って紹介する。

 

■「新しい現実」と「明らかなディスラプター」

今、私たちの目の前には、わずか10年前はおろか5年前とも全く異なる「新しい現実」が到来している。エネルギー分野では、再生可能エネルギー、とりわけ風力発電と太陽光発電が「主力電源」の地位に就いたことだ。「取るに足らない存在」と考えられていた風力発電や太陽光発電が、わずか5年ほどで、今や世界中の誰もが認める「主力電源」となったことだ(電力会社や経団連など日本の一部は認めないかも知れないが)。なにせ、太陽光発電はこの5年間でコストが5分の1、風力はおよそ半分だが、この風力発電や太陽光発電が今やあらゆる電源のなかで最も安くなった。

 

もう一つ、「自動車界のスティーブ・ジョブス」と喩えられるイーロン・マスクが起業した、同じく「自動車界のiPhone」と喩えられるテスラが電気自動車(EV)を2008年にリリースしてから、EVも飛躍的に市場を拡大し、この6年間で100倍の市場、コストも4分の1に下がった。

 

エネルギー技術の中では、これらの3本柱、すなわち風力発電と太陽光発電、そしてEVもしくは蓄電池が今後も飛躍的に拡大してゆくことは「確実な未来」である。その特徴は、分散型であるため、従来の電力産業を「根こそぎ変えてゆく」とみられている。この「根こそぎ変える」ことを「ディスラプション」(大変革)、そしてこの3本柱は「根こそぎ変える存在」=「ディスラプター」と呼ばれる。

 

この「ディスラプター」について、もう一つ、忘れてはならないものがある。人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、仮想現実(AR)、超高速通信(5G)、ブロックチェインなどから構成されるデジタルエレクトロニクスだ。これだけでも、「第4次産業革命」と呼ばれる。このデジタル化の波は、もちろんエネルギー市場を大きく変革してゆき、電力産業の構造はもちろん、規制やルールのあり方、様々な新しいビジネスモデルなどの創出が起き始めている。

 

■余儀なくされる規制やルールの抜本的な見直し

[1] Edited by Fereidoon Sioshansi, “Consumer, Prosumer, Prosumager 1st Edition – How Service Innovations will Disrupt the Utility Business Model”, Academic Press Feb.2019