第3話 ご当地電力、あるいはプロシューマーの登場

2017年01月18日

 

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第3話「ご当地電力、あるいはプロシューマーの登場」

 

飯田哲也(エネルギー・チェンジメーカー)

 

自然エネルギー100%へのビッグトレンドに加えて、しかもそれを後押しするかたちで、地域コミュニティで地域資源である自然エネルギーを活用し、自立する動き、いわゆる「地産地消」や「ご当地電力」「ご当地エネルギー」が世界中で広がっています。英語では、コミュニティパワーと呼ばれます。そうした、自治体や市民が主体となって運営する「ご当地電力」が世界中・日本中で大きく広がりつつあります。

 

2012年のFIT導入以降、日本は急速に太陽光発電の導入を拡大してきましたが、そのほとんどが地域外・国外の大手外部資本による大型のメガソーラー開発のため、地域にとってはメリットが乏しい点が課題でした。そうした中で、地域社会が主体的に関わり、エネルギーの地域所有や便益を地域社会に還元する「コミュニティパワー」(ご当地電力)がわが国でも次々に立ち上がりつつあります。ご当地電力とは、自治体や市民が主体となって自然エネルギーの供給を目指すものです。小田原電力(ほうとくエネルギー株式会社)やしずおか未来エネルギー株式会社、調布電力、多摩電力などがすでに立ち上がり、福島でも自然エネルギー100%の自給を目指す会津電力が立ち上がりました。

たとえば小田原のほうとくエネルギーは、震災直後に計画停電や観光客の激減、海の汚染に対する懸念などを経験して、エネルギーの自立を目指す動きが市民の間で広がり、行政や地域経済界を越えて広がって誕生しました。会津電力は、地域の豊富な水力資源を使えば福島県が昨年定めた「2040年自然エネルギー100%」を達成できるという壮大な構想の下、市民や地域経済界の人たちが集っています。まずは非営利の「会津自然エネルギー機構」を立ち上げ、それを母体に、会津電力株式会社が発足しました。

いまや大小合わせれば、全国で200を越える「ご当地電力」が動き出しつつあります。こうした地域社会による自発的・自立的な参加と行動が、「第4の革命」と呼ばれる再生可能エネルギーの加速度的な拡大の原動力となっています。さらには、太陽光発電と家庭用蓄電池がよりいっそうのコスト低下をしてゆく中で、従来からの余剰電力販売のかたちだけでなく、個人レベルで電力自給する「オフグリッド型」、一人発電所長が他の個人と電力取引する「P2P型」、数多くの住宅や事業所の屋根を借りる「屋根借り型」や「オンサイト電力供給型」など、さまざまな分散エネルギー形態がすでに誕生し、また今後誕生してくることが予想されます。

このように、エネルギー需要家(コンシューマー)側でエネルギー生産(プロダクション)も行うことを「プロシューマー」とも呼ばれます。従来の限られた一部の独占者が大型のエネルギー設備で電力を生産し一方通行的に需要家に電力を供給する「中央・少数独占・大規模集中型」の従来型のエネルギー産業や電力産業は、遅かれ速かれ、こうした「地域自立・多数のオープン・小規模分散ネットワーク」にとってかわられると思われます。