第24話 もはや途上国以下の日本の政策リスク

2018年11月01日

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先日、日本で開催された国際会議で、私がモデレータを務めるパネル討論で、衝撃の発言に遭遇した。ある登壇者が「これまでは『さすがに日本だから信頼しろ』と海外企業に説明してきたが、ここまで日本の政策変更がデタラメだと、もはや途上国のカントリーリスク並みか、それ以下だ」と発言したのだ。

 

このところ、明らかな再エネ政策の失敗や混乱が続いている。9月に行われた太陽光発電の第2回入札では、あろうことか上限価格を非開示とした結果、一件も落札できない「札割れ」だった。公共施設の入札ではあるまいし、後から公表された15.5円/kW時の上限価格を「非開示」とする意図は、まったく理解できない。10月に入ると、経済産業省の審議会で唐突にいくつかの政策変更が「予告」された。ちなみに、この国では、「審議会資料での予告」は、すでに政策決定したことを意味する。

その一つは、32円/ kW時〜40円/ kW時のプレミアムFIT価格の事業認定案件について、「3年ルール」の縛りがないものについては、一定の猶予期間を設けるものの、価格を引き下げる措置だ。これは、およそ30GWもの未稼働案件の「在庫」の大半をこれらプレミアムFIT価格の案件が占めている現実や、急速に低下してきた太陽光モジュール価格などの実態を反映し、また消費者の負担軽減のためには、合理的な措置ではあるものの、この唐突な「予告」と実施は、日本の太陽光発電市場に大混乱と訴訟の嵐を呼ぶことは必定だろう。

その他、太陽光発電への蓄電池の「事後設置」を事実上、封じる措置も「予告」された。九州電力が10月から実施した無補償の出力抑制に対して無策のまま、その対抗策や出力調整に資する蓄電池の設置を封じることは、太陽光発電事業者だけにリスクや負担を寄せるだけでなく、本来、普及が求められる太陽光発電と蓄電池の両方の普及を封じる「愚策」であろう。

本来、政策の役割は、事業者が公正に競争できる市場環境を整えることだろう。最大の障害となっている送電線の空き容量や負担金の問題にもっと踏み込み、完全にオープンな電力市場を整え、そして何よりも、持続可能性とエネルギー安全保障の観点から、再生可能エネルギーの優先接続と優先給電という原則をあらためて確立することが必要だ。