第23話 九州電力が太陽光発電の出力抑制をする前にできる6つのこと

2018年10月03日

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9月7日、いよいよ九州電力が太陽光発電など自然エネルギー発電に対して出力抑制を今秋にも行う可能性があると発表した[1]

九州電力は、幾つかの離島では出力抑制を行ってきたが、本島では実施してこなかったので、これは事実上、日本で初めての自然エネルギー発電への出力抑制となる。背景には、九州電力の事情もある。九州電力エリアには、2018年7月末の時点で固定価格買取制度(FIT)のお陰で803万kWの太陽光発電が導入されており、最大需要(約1600万kW)のおよそ5割を越える日本でもっとも普及が進んだ地域となっている。そのため、1年の中でも電力需要が低下する今年5月(2018年5月3日)の昼間には電力需要に対する太陽光発電の割合が81%に達した(図1)。九州電力はOCCTOの定めた優先給電ルール[2]に基づいて、火力発電の出力抑制、揚水発電の活用を行い、太陽光発電のピークに対する需給調整を行っている[3]

一方、6月16日の玄海原発4号機の再稼働により4基の原発(合計出力414万kW)が稼働している。ベースロード電源として出力抑制を行わない方針の原子力発電の比率が高まっており、その結果、秋の電力需要の減少と共にこの優先給電ルールに基づいて、これまで実施されてこなかった九州本島での太陽光発電などへの出力抑制を予告した、というわけだ。

 

九州電力は、すべての自然エネルギー発電に対して、少なくとも30日以内の出力抑制を行うことは制度的に認められている(旧ルール)。さらに、2017年度の「接続可能量」(30日等出力制御枠)である817万kWを超えて接続する太陽光発電については、無制限・無保証の出力抑制が行われる可能性がある(指定ルール)。つまり、九州電力の都合で1年中ずっと停止しても文句を言われない・何の補償もしない、というひどい制度だ。

しかし九州電力は、太陽光発電などを出力抑制する前に、まだできること・やるべきことがある。次の6つだ。 これらを実施すれば、太陽光発電などの出力抑制はほとんどの場合、避けることができる。

 

①関門連系線を最大限活用する。少なくとも5倍程度(プラス約170万kW)は活用できる。

②火力発電所(特に石炭火力)および原子力発電所の稼働抑制。電源開発の松浦石炭火力(長崎県)など計画的に抑制・停止できる石炭火力はまだ多く、原子力発電所も低需要期に出力を低下させることも問題なくできる。これでさらに300〜500万kW程度の太陽光発電・風力発電の拡大を受け入れることができる。

③需要側調整機能(デマンドレスポンス)およびVPPの積極導入。仮に需要の1割=160万kWに採用することで、主に太陽光発電の昼間ピークを受け入れる可能性が拡大する。

④出力抑制した自然エネルギー事業者への補償。自然エネルギー発電の出力抑制はドイツでも1〜2%程度見られるが、ほとんどは補償される。原資は託送料金で回収すれば、九州電力の負担は避けられる。太陽光発電など自然エネルギー事業者は補償を得ることで、今後も金融機関などの融資を得て太陽光発電など自然エネルギー事業を拡大してゆくことができる。

⑤「接続可能量」の廃止と「優先給電」の確立。そもそも、純国産・クリーン・無尽蔵な太陽光発電など自然エネルギー発電が、発電できる余地があるのにわざわざこれを止める(抑制する)ことは本末転倒である。自然エネルギー発電を最優先して給電してゆく原則を定めることが、日本のエネルギー自立のために不可欠だろう。

⑥電力需給調整の情報公開の徹底

 

 

[1] 九州電力「今秋の九州本土における再生可能エネルギー出力制御実施の見通しのお知らせ」(2018年9月7日) http://www.kyuden.co.jp/rate_purchase_topics.html

[2] OCCTO(電力広域的運営推進機関)「送配電等業務指針」第10章第4節「下げ調整力不足時の措置」

[3] 九州電力「優先給電ルールの考え方について」(2016年7月21日)