第17話 ブロックチェーンとエネルギー変革

2018年03月19日

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昨今、ビットコインや他の仮想通貨は、投機の対象となったり、仮想通貨取引所を運営するコインチェックが仮想通貨「NEM(ネム)」を不正流出させた問題などで話題を呼んでいます。その仮想通貨ビットコインの根幹を成す技術として誕生したのが、ブロックチェーンです。

ブロックチェーンとは、中央集権的なシステムがなくても信憑性のある合意や取引を達成できる「分散型ネットワークの認証システム」です。ちょうど、インターネットが分散型コミュニケーションの新しいインフラとなったように、ブロックチェーンは分散型取引の新しいインフラとなる、という相似形と見てよいでしょう。

その活用可能性は、仮想通貨はもちろん、はるかに幅広くありとあらゆる信頼できる「直接取引」(P2P、ピア・トゥー・ピア)を実現することができます。当然のことながら、独占電力会社に代わって、出現しつつある分散ネットワーク型のエネルギーシステムとも相性がよいと考えられています。

管理コストが高くて現在は実現されていないエネルギー分野でのさまざまな利用———たとえば電力メータの計測と請求、CO2認証、eモビリティの決済など———を可能にすると見られており、欧州電力産業協会EUREKECTRICなどは、ブロックチェーンを「産業の潜在的なゲームチェンジャー」と考えています[1]

実際に、最近どのエネルギー関連の国際会議に出ても、ブロックチェーンはきわめて重要な話題になってきています。また、ブロックチェーンは、すでにエネルギー分野で試験利用も始まっています。系統運用者Tennetと蓄電池メーカーSonnenは、数千件の家庭用蓄電池をつないで変動する自然エネルギー電力とバランスさせるためにブロックチェーンを利用すると発表した他、RWEからスピンオフしたinnogy社は、電気自動車ユーザーと充電ステーション運営者の間の支払いを媒介するためにブロックチェーンを使う計画です。

日本でも、東京電力が、昨年にはブロックチェーンを活用した電力直接取引(P2P)プラットフォーム事業を行うConjoule社を上記innogy社と共同で立ち上げてドイツで事業を開始し[2]、今年に入っても、ブロックチェーンを活用してエネルギー取引等の基盤システムの構築を行う英ベンチャー企業Electron社に出資するなど[3]、ブロックチェーンの活用に積極的に乗り出しています。

今後、ブロックチェーンがエネルギー産業にどのような「破壊的な変化」をもたらすのか、目を離せません。

 

 

[1]  “EURELECTRIC launches expert discussion platform on blockchain” (2017年6月1日) https://www.eurelectric.org/news/eurelectric-launches-expert-discussion-platform-on-blockchain/

[2] 東京電力ホールディングス株式会社プレスリリース(2017年7月10日) http://www.tepco.co.jp/press/release/2017/1443908_8706.html

[3] 東京電力ホールディングス株式会社プレスリリース(2018年1月19日) http://www.tepco.co.jp/press/news/2018/1473672_8965.html