第15話 2017年の「10大ニュース」
すでに2018年が明けて半月が過ぎたが、あらためて2017年のエネルギー・シンギュラリティとしての「10大ニュース」を振り返ってみよう。
①太陽光発電が原発を越えた
太陽光発電は、まだ速報値だが2017年に世界全体で100GW増えて、累計で380GWに達し、ついに原発の設備容量(380GW)と肩を並べ、おそらくは追い抜いた。その拡大のおよそ半分の50GWが中国だった。
②太陽光発電が2円を切った
2017年は、太陽光発電のコスト低下が加速した年で、アラブ首長国連邦での2.4セント/kW時(約2.7円/kW時)で始まり、最後はサウジアラビアの1.78セント/kW時(約2.0円/kW時)で締めくくった。年明けに出た国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のコストレポートによれば、世界平均でおよそ10セント/kW時(約11円/kW時)の太陽光発電も、3年後の2020年には半減する勢いでコストが下がっていると見込んでいる。
③「シンギュラリティ」とエネルギー
このブログのタイトルでもある「シンギュラリティ」とは、指数関数的な成長や加速度的な変化を特徴とし、既存の構造や枠組みの「破壊的な変化」を引き起こすという、幅広い意味に応用されるようになった。昨年には「シンギュラリティ大学ジャパン」も立ち上がり、本来の用途の人工知能分野だけでなく、エネルギー分野や電気自動車など他の技術分野でも市民権を得てきた。
④モビリティ元年
日本では、国もトヨタもホンダも何を血迷ったか水素燃料電池自動車などにうつつを抜かしていたが、昨年で完全に電気自動車への流れができた。たんに電気自動車への転換だけではなく、自動運転やライドシェアも並行して急拡大しつつあり、そうした技術やビジネスモデルの統合で、モビリティの分野でも「破壊的な変化」が起きるとのトニー・セバ スタンフォード大学教授の予見が注目を集めた。
⑤洋上風力発電
太陽光発電と並行して、欧州の洋上風力発電も価格破壊を引き起こしながら、急速に拡大しつつある。昨年4月には、デンマークの洋上風力発電企業ドング(昨年エルステッドに改名)がドイツの電力市場に補助金なしの洋上風力発電で応札するに至った。日本でも洋上風力発電は徐々に盛り上がりつつあるが、国が鳴り物入りで開発した「浮体式洋上風力発電」はまともに稼動することもなくひっそりと幕を閉じようとしている。
⑥あらためて注目されるデンマーク
デンマークが実現しつつあるスマートエネルギー社会のかたちが、あらためて注目を集めている。太陽熱温水による季節間温熱貯蔵など再生可能エネルギーを統合した低温かつ高効率な第4世代地域熱供給、変動する風力発電を電力市場と温熱市場で統合し温水による「蓄電」も含めた「スマート化」、風力発電の余剰電力を活用してバイオガス等からの二酸化炭素をメタン化する風力ガスもしくはグリーンガスの実用化など、再生可能エネルギーベースの分散型エネルギー社会の理想像の方向性を垣間見ることができる。
⑦シュタットベルケ
ドイツや北欧では歴史的にもともと地方自治体所有のエネルギー会社(シュタットベルケ)が多かったが、1990年代からの市場化・民営化の流れで、多くのシュタットベルケが大手のエネルギー会社に身売りされていった。それが、あらためて「再公有化」を求める市民の声に押されて、シュタットベルケを再買収する住民投票がハンブルグやベルリンなどで行われている。日本でも一昨年の電力小売り全面自由化に続いて、自治体主導の公営の電力会社が注目を集めており、昨年には「日本シュタットベルケネットワーク」が
⑧ドイツの自然エネルギーが33%へ
年明け早々にドイツの2017年のエネルギー報告が公表され、全体の電力消費量が微減する一方で、再生可能エネルギー電力は33%へと拡大した(前年は30%)。これは、2020年の目標を3年速く実現したほか、仮にこのペースで拡大すると2030年には再生可能エネルギー100%に到達する。
⑨取り残される日本
世界全体が再生可能エネルギーへと突進しつつある中、政権交代して脱原発・再生可能エネルギー拡大に舵を切った韓国や台湾、ベトナム、そして世界で圧倒的に再生可能エネルギーの盟主となった中国など、東アジアの中でも、日本は唯一「取り残され」ている状況が、ますますはっきりしてきた。
⑩タイムリーだった映画「日本と再生」
そうしたなかで、私が企画監修を務め昨年2月に公開した映画「日本と再生〜光と風のギガワット作戦」は、じつにタイムリーな映画であった。これまでに全国各地そして海外を含めて、およそ300カ所で上映会が主催され、この先もおよそ500カ所もの上映会が予約されている。
日本のエネルギーは、こうした映画に触発された人々から沸き起こる「エネルギー」の力によって変わってゆくかもしれない。