第14話 グリッド(系統)パリティからゴッド(神)パリティへ
太陽光発電と蓄電池は、いずれも急激に安くなり続けており、いよいよ「太陽光発電+蓄電池」が系統電力の価格を下回ろうとしている。太陽光発電のコストが系統電力と同等になることを「グリッド・パリティ」と呼ぶが、この「太陽光発電+蓄電池」が系統電力の価格と同等になることを「ゴッド(神の)・パリティ」と呼ぶ。世界的には来年あたりにこのゴッド・パリティに到達するとドイツ銀行は報告している(下図)[1]。
図1 ドイツ銀行レポート“Solar grid parity in a low oil price era” (Mar.15, 2015)より
米アリゾナ州のTUCSON電力は、この5月にメガソーラー(100MW)に30MWの蓄電池を備えた太陽光発電所を4.5セント/kW時で20年間購入する契約を結んだ。家庭用ではないが、蓄電池付きの太陽光発電所としては驚異的な低コストである[2]。
東京電力は、この4月に一般家庭向け蓄電池ソリューション事業を展開する英国ベンチャー企業Moixa社へのおよそ7000億円の出資を発表している[3]。Moixa社は、小型(容量2kWh)の蓄電池を複数の家庭に設置し、蓄電池の充放電を遠隔で制御することで蓄電池の余剰電力を集約し、事業者に販売することなどで経済的なメリットを提供するサービスを行っている。
スウェーデンの家具等の大手イケアは、英国でこの8月から、ソーラーセンチュリーと組んで家庭向けに太陽光発電と蓄電池の組合せの販売を開始した[4]。サイズにもよるが、およそ1万ポンド(約140万円)でおよそ電気料金を70%節約し、12年で投資回収できるとしている。
太陽光発電と蓄電池を使ったビジネスモデルは、夜明け前夜といえる。VPP(ヴァーチャル発電所)、ブロックチェーンを使ったP2Pの取引など多様なビジネスモデルが今後提案してゆくものと思われる。そして、今後もさらに太陽光発電と蓄電池のコストは下がり続けてゆくと、送電線から完全に切り離したオフグリッド、つまりゴッド・パリティが加速度的に進むとみられる。米国では、今後数年で地域の配電会社では、ゴッド・パリティに乗り換える顧客の脱落で、数%から数十%の単位で顧客が失われる見通しもある。
今後の太陽光発電+蓄電池、そしてゴッド・パリティの行方から、目が離せない。
[1] Deutsche Bank “Solar grid parity in a low oil price era” (Mar.15, 2015) https://www.db.com/cr/en/concrete-deutsche-bank-report-solar-grid-parity-in-a-low-oil-price-era.htm
[2] Utility Dive “How can Tucson Electric get solar + storage for 4.5¢/kWh?” https://www.utilitydive.com/news/how-can-tucson-electric-get-solar-storage-for-45kwh/443715/
[3] 東京電力ホールディングスプレスリリース(2017年4月4日) http://www.tepco.co.jp/press/release/2017/1402651_8706.html
[4] IKEA home solar panels and battery storage http://www.ikea.com/gb/en/ikea/solar-panels/