第12話 ゼロエネルギー住宅からプラスエネルギー住宅へ

2017年10月19日

近年、ZEH(ゼッチ)という略称をよく見かけるが、これは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」を指す。「20%以上の省エネを満たした上で、太陽光発電等でエネルギーを創ることにより正味でゼロ・エネルギーを目指す住宅」と定義される。

国のエネルギー基本計画でも「2020年までに標準的な新築住宅でZEHを実現」、「2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現」といった目標が設定されている。現在、設計者やハウスメーカは誰しもZEHに向けて突っ走っており、日本でもいよいよゼロ・エネルギー住宅が本格導入する時代に入ったといえよう。

地球環境にも日本や地域のエネルギー自立にも役立ち、光熱費も安く家計に優しく、ヒートショックもなく防音効果もあるので健康に暮らせることに加え、地震等の災害にも強く、住宅としての資産価値も高いと、良いことずくめだから、ぜひ普及して欲しいものだ。

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エネルギー需要そのものを削減してゆくために、住宅や建築物の省エネ性能を高めてゆくことも、地域におけるエネルギーの自立化・地産地消化のために欠かせない。

欧州では、2009年に欧州議会が「2019年以降に新築する全ての建物は、ゼロエネルギーであること」を提言し、賛成多数で採択された。省エネ住宅新築のための経済支援拡充が決定したほか、普段住まわない別荘にも最小エネルギー性能基準を満たすことを求めるなどの原案が決まり、ドイツや北欧などではすでにそれを越える「プラスエネルギーハウス」が普及段階に入っている。プラスエネルギーハウスとは、文字どおり「使用するエネルギーよりも大きなエネルギーを生み出す家」と定義される(アーネ・エルムロス氏(スウェーデン・ルンド大学建築物理学部名誉教授))。

日本でも、太陽光発電が普及するにつれて、「消費エネルギーと作りだすエネルギーの差し引きがゼロ」を標榜するハウスメーカや工務店、建築事務所が増えてきました。次の4つの要件を満たせば「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」として国(経済産業省)に認可される。断熱性能が「省エネ法」で定める基準値以下であること、自然エネルギー等を取り入れた設計手法、エネルギー計測装置、そして太陽光発電システムの4つだ。

また地域によっては、エネルギーの地産地消に加えて、建築木材の地産地消も含めた住宅造りを組み合わせるなど、地域ビジネスの振興に配慮した取り組みも見られる。

地方自治体にとっても、ZEHの建築確認という業務はもちろんのこと、こうした高質・低炭素住宅の普及をいかに促していくか、政策の知恵の絞りどころである。

ZEHによって新築住宅の質が高まるのは良いが、ストックはせいぜい年2%しか置き換わらない。世界に誇る「省エネ大国」であるはずの日本で、最大の課題は、既存の住宅の8割が「断熱なし」とお寒い限りである既設の住宅と、投資利回りだけで安普請の賃貸住宅である。

特に住宅の窓がお粗末で、窓から冬は暖気の6割が逃げ、夏は7割の熱気が入ってくる。したがって、既築住宅をZEHにすることは無理でも、冬温かく夏涼しくなるリフォームは比較的に安く簡単にできる。新築の2%をゼロにすることも重要だが、ストックの98%を1割省エネすれば5倍の効果が見込める。

こうした幅広く目配せした政策こそ、地方自治体の役割であり、地域の工務店などにとっての新しいビジネスチャンスではないだろうか。

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