第5話 「第4世代地域熱供給」

2017年03月15日

第5話 「第4世代地域熱供給」

飯田哲也(エネルギー・チェンジメーカー)

 

太陽光発電や風力発電など電力分野での驚異的な自然エネルギー転換の影で忘れられそうになりますが、熱分野での自然エネルギーや地域エネルギーの利用も重要です。日本ではこの分野で非常に立ち後れていますが、手がかりとして、その分野で世界のトップランナーであるデンマークを紹介します。デンマークでは「第4世代地域熱供給」というコンセプトで、風力発電で43%を賄う電力分野だけでなく、地域熱供給が60%の住戸に普及している熱分野も含めた自然エネルギー100%を目指しています。この「第4世代地域熱供給」と風力を組み合わせることで、オール電化に比べて一次エネルギー供給を4分の1に減らすことが可能です

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さて、「第4世代地域熱供給」とは、主に以下の3つを特徴とする地域熱供給のコンセプトですが、もちろん地域熱供給に限らず、熱利用全体に援用して考えることができる哲学です。
(1) 熱供給の低温下による高効率化
(2) 熱源の多様化(自然エネルギー・廃熱等)
(3) 熱・電双方向の「スマート化」

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第1の「低温化による高効率化」は、もっとも中心の考えです。地域熱供給は歴史的に、蒸気熱供給(第1世代)、100度を超える温水熱供給(第2世代)、100度以下の比較的高温水の熱供給(第3世代)と展開してきました。そして「第4世代」では、せいぜい50〜70度を供給温水とする熱供給として位置づけています。

この低温下のメリットは、周辺温度との温度差が小さくなることで熱ロスが小さくなることに加えて、往復温水間の大きな温度差を取ることで供給温水量を最小化することができ、ポンプ動力を最小化できる、というメリットがあります。こうして戻り温水の温度を下げてゆくと、それを潜熱回収(燃料となるバイオマスが含む湿分が蒸気となって廃棄される熱量を回収する装置)に用いることでシステム全体をさらにエネルギー高効率とすることができます。

第2の「熱源の多様化」は、上の低温化とあいまって、バイオマスだけでなく太陽熱や地中熱、工場廃熱などさまざまな地域エネルギーを利用できる可能性が高くなることを指します。とりわけデンマークでは、比較的規模の大きな太陽熱温水器と大きな蓄熱槽との組合せによって、夏期の熱需要をほぼ賄うとともに、季節間の蓄熱利用として活用するケースが増えつつあります。

第3の 「熱・電双方向のスマート化」とは、 電力市場と地域熱供給を介して熱市場が連動している状況を指します。例えば風力発電量が多いと電力市場価格が下がるため、熱電併給であるコジェネレーションを抑制・停止します。その間の熱供給は、デンマーク全土に1000カ所以上広がっている 温水タンクがバッファを担います。さらに電力市場価格が低く、かつ熱需要が大きい場合井は、電力市場から電力を購入してヒートポンプによって熱を生み出す「熱電変換」も行われます。逆に、風力発電量が少ないと電力市場価格が上がるため、売電収入も稼ぐためにコジェネを最大限運転しますが、その際の余りの熱生産は、やはり 温水タンクが担います。つまり、温水タンクがコジェネと地域熱供給を介して「蓄電池」の役割を果たしているのです。こうして、コジェネや地域熱供給が電力市場の「柔軟性」に参加しています。

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日本では地域熱供給への取り組みは、大阪万博前の千里ニュータウン開発や札幌オリンピックの選手村など第一次石油危機前に遡ります。その意味ではデンマークに劣らない長い歴史を持っているのですが、実情は、第1世代と第2世代に留まったままで、停滞しています。

それは、もともと熱を公共が担うという考えが乏しかったことや住宅の温水・暖房の集中化の比率が非常に小さいこと、地域熱供給の熱導管の敷設費用が桁違いに高い、といった理由が輻輳しています。また背景には、電力・ガス・石油という大手のエネルギー産業が「すき間」であった熱市場を埋めてしまったエネルギー産業構図もあろうかと思われます。

ようやく、こうしたデンマーク型の「第4世代地域熱供給」を目指す動きが始まっていますが、まだ緒に就いたばかりです。次のパッシブハウスや小型分散型のバイオマスボイラーなども組合せながら、地域熱利用におけるエネルギーの自立化・地産地消化への道のりを目指してゆくことになると思われます。