第11話 改正FIT法後の日本の太陽光発電の行方

2017年09月13日

最近の日本の太陽光発電市場は、世界の大きな潮流に反して、年々逆風が激しくなっている。その結果を反映して、71GW(2013年度)→91GW(2014年度)→92GW(2015年度)と順調に拡大してきた日本の太陽光発電市場は、2016年度は62GWと陰りを見せ、今後も低落してゆく見込みだ(図1)。スペインやイタリアが経験した「ブーム&バースト」の失敗を、後発の日本が繰り返してしまったわけだ。

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図1 日本の太陽光発電の設置量の推移(年度)

こうした中で、どのような方向性を目指してゆくべきか、少し考察してみる。「逆風」の直接の原因ははっきりしている。

第1に電力会社の系統制約である。とりわけ、事実上の導入上限である接続可能量(30日等出力制御枠)、FIT法から再エネの優先接続が外れたこと(2016年4月)による空き容量ゼロ地帯が急激に全国に広がっていること、そして電力会社から請求される法外な接続負担金の3つが大きなカベになっている。「系統」を口実にした太陽光発電など自然エネルギー発電の「締め出し」と言ってもよい。
第2に、FIT法では、買取価格が年々低下するだけでなく、その手続きが毎年猫の目のように変わり、どんどん厳しく複雑化してきていることだ。とくに最初の2年(俗に言う40円案件と36円案件)の手続きは、形式さえ整っていれば「何でも通し」のいわゆるザルであった。
ところが、低圧分割の販売禁止(2014年4月)、九電ショックと無制限無補償の接続可能量の導入(2015年1月)、パネル変更ルール見直し等(2016年8月など)、そして今春3月末の電力会社との連系契約が未締結の設備認定取り消しでは、28GWもの設備認定が取り消されたと伝えられている。新FIT法が適用されたこの4月以降、従来の「設備認定」から「事業認定」に変わり、過去の全ての再生可能エネルギーの「設備認定」を切り替えるために、大きなトラブルになっている。その間隙を縫って、8月31日には「後から過積載」を禁じる省令改正も決まっている。
こうした経緯の結果、日本の太陽光発電の設備認定(10kW未満の余剰メニューを除く)は、図2のような推移をたどっている。最初の2年でおよそ70GW(内訳は40円案件が約20GW、36円案件が約50GW)と約9割の設備認定が出され、その後はわずかに約10GWしか増えていない。

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それがこの3月末の時点で、約28GW(ほぼ全てが40円案件と36円案件と思われる)が無効化され、29GWが設置済みとなっている。つまり、未完成の設備認定案件はおよそ22GW残っており、その半分以上(10GW以上)が40円案件と36円案件であろうと推測される。
これらは、さまざまな難点を抱えた案件であることは容易に推察されるものの、現時点でこの買取価格で建設できるとすれば収益性が非常に高いため、そうした案件の権利の所有者は高値で売買したり、あるいは自主開発や共同開発するなどして、開発に向けて進めている状況にある。とはいえ、この22GW(とくに40円案件と36円案件の10GW余)の「在庫」がはけた時点、おそらくこの2〜3年で日本の太陽光市場の初期のバブルが終わることになるだろう。すでに、太陽光発電業界は、大淘汰と新市場への模索が始まっている。
初期の建設からメンテナンスやモニタリング等にシフトする事業者は比較的に「真っ当」だが、初期の買取価格40円時代を懐かしんで小型風力の55円に参入する事業者、バイオマスや風力発電などに横シフトする事業者は、過去の太陽光発電事業のように一筋縄ではゆかない経験をすることになるだろう。

では、太陽光発電市場が目指すべき王道はどの方向なのか。グローバルな傾向から今後を見据えると、過去6〜7年で10倍増してきた太陽光発電市場は、今後も、少なくとも10年間は倍々ゲームで伸びてゆくことは間違いない。
その市場はどこか。基礎体力のある企業であれば、日本のような「政治的な系統制約」のある市場ではなくグローバル市場で、数十MWから数百MWの大規模な太陽光発電を目指すべきだろう。すでに、ソフトバンクはインドでの太陽光やモンゴルでの風力発電、丸紅がアラブ首長国連邦での太陽光などで、それぞれ事業に取り組んでいる。
他方、もう一つは限りなく分散化してゆく市場だろう。太陽光も蓄電池も急激に低コスト化しつつある。日本でも、初期の余剰電力メニューの買い取り期限が切れる2019年を睨んで蓄電池ビジネスを多くの企業が狙っている。オーストラリアでは、太陽光発電とバッテリーの組合せで提供する料金の方がすでに電気料金よりも安くなっている(図3)。

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図3 オーストラリアCME社が提供する太陽光+バッテリー料金

こうして、分散型の太陽光発電は、電力供給ビジネスはもちろん、オフグリッドも大きな「市場」になるであろうし、EVとの組合せやライドシェアへも広がってゆく。こうした新しい分散ネットワーク型のビジネスモデルを構築した企業が次代を築いてゆくのではないか。

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